島津法樹さんのコラム
初出は「ハイハイQさんQさんデス」(http://www.9393.co.jp/)に
2004年8月から2005年11月まで連載された「損する骨董得する骨董」です。

第124回

<とぴっく10>
不動産も骨董も手入れ次第

 
11世紀バプオントルソ


彼らに石像をチェックしてもらい、
鑑定方法のレクチャーも受けた。
そして僕が購入した女神像については
館長の鑑定書を滞在中に作ってもらった。
その時彼らはこうも言った。
「ノリキさん、この女神像が偽物だったら、
プノノンペンにあるすべての作品は偽物ですよ」
これで女神像の真贋にたいする大きな保証と
僕自身の鑑定に対する自信を得た。

クメール美術の取引については
現在ユネスコの難しい制限がある。
2002年、日本も条約を批准している。
だからこの像が条約批准時以前に
日本に到着していたことを証明しなければならない。
それでなければ輸出など難しい。
アート・オブ・アジアと言う美術雑誌で、
女神像を紹介しておいた。
これにより像が批准以前に日本に到着していたことを証明できる。
世界のどこにでも移動できると言う証を得たのだ。
今計画しているのは、この像を含め
コレクションしている僕が購入した作品を
図録にしたいと思っている。
僕が入手した石像の魅力を公立私立美術館の作品と比較して、
そのレベルを世界中の人達に知ってもらおうと思っている。
それに本を書けば僕自身の専門家としての信用度もうんと上がる。
何よりクメール美術を勉強する楽しみも増す。

その後得た情報では、
2004年9月23日ニューヨーククリスティー、
インディアン・サウスイーストアジアン・フェアーで
同様の女神像が1,127,500ドルで落札されてた。
僕が買った石像がこの価格で競り落とされる確証はないが、
前記したように様々な価値付け、経歴付けをして
作品の値打ちをどんどん上に押し上げるような努力が大切だ。

こんなことを言う人がいる。
「美術品は買う時はよいが、
 売るときに二束三文に買い叩かれる」
僕は思う。
それは買った作品を大切にせず、
単にストックしているだけの場合だ。
いくら良い作品でも、世の中から忘れられてしまうと
そのような問題が起こるのである。
このコラムを読まれた皆さんはもうお気づきかと思うが、
骨董は育て、いつくしみ、付加価値を上げる
ということが大切なのである。
まず、買ったら出来るだけ
資料や鑑定などの重要なことをきっちりとおこなっておく。
それはその後の流動性を高めるために非常に大切なことだ。
骨董はそんなことを楽しみつつやれる数少ない資産なのだ。

僕が入手したクメールバプオンの石像は
プロとして断言できるが、
オークションで天文学的な値段で落ちた作品より確実に良い。
身近においておくだけで、いつも楽しい夢を見ることが出来る。
分かりやすく言えば、土地付一戸建ての家を買うと、
木を植えペンキを塗り、
役所に掛け合って歩道を整備してもらうことが大切だ。
こんな風に試算を大切にして、
買ったときより高い値段で家を売買するようなことが
だんだんと行われるようになるだろう。
アメリカやヨーロッパではそれが常識のようだ。
それと同じことを骨董でやればいい。