島津法樹さんのコラム
初出は「ハイハイQさんQさんデス」(http://www.9393.co.jp/)に
2004年8月から2005年11月まで連載された「損する骨董得する骨董」です。

第176回


儲かる骨董-実行編
11、時間を見方につける華僑3代、150年意識やってみよう!

銅銭が詰まった13世紀のベトナムの壺

僕はこれまでアジアのリッチマンと、
骨董を通じ幾度か話し合う機会があった。
彼らの骨董を見る目は常に現実的である。
好き嫌いは強烈に持っているが、
さらに資産としてみる目には厳しいものがある。
日本のコレクターも彼らと同じように
資産意識を持つ人も多くなってきているが、
一つ決定的に違うところがある。
それは骨董を収集して持ちこたえるという
時間に対する概念の違いだ。

台湾で大きな事業を営むAさんというコレクターがいた。
この人は書画から陶器、仏像まで
あらゆるジャンルのコレクションをしていた。
「もしもし、シマズさんですか。わたしはAと言うものです。
 あなた、東京に来る機会はありませんか」
という電話があった。
彼の名はコレクターとして有名で、同業者からも聞いていた。

10日後にAさんの家を訪問することになった。
確か邱先生のお宅の近くだったと記憶している。
尋ねて行ったAさんの応接間で、
次々と見せられたコレクションは正直言って玉石混合だった。
「いいものもありますが、新物も結構混じってますね」
と言うと、一瞬気まずい風が流れた。
しかしAさんはすぐ立ち直ってこう言った。
「これでも100年もすると骨董になるね。
 今商売で困っているわけでもなし、
 孫子の代にも大事にするように言っておく」
と、本当にそうするだろうと思うほどAさんは落ち着いていた。
骨董にしても不動産にしても、
彼らは個人というよりファミリーの資産と考えている。
それだけに深さがある。

表面的な言葉だけの愛や目の前にいる家族だけでなく
数代後の事まで考えている。
こんな考え方は今の日本からは消えてしまっている。
しかしとても大切な考え方だ。

                     (続く・・・・)