初出は「ハイハイQさんQさんデス」(http://www.9393.co.jp/)に
2004年8月から2005年11月まで連載された「損する骨董得する骨董」です。
第26回
 
明るい店―こんな店を選ぼう
 
 

骨董屋の展示には二つのタイプがある。

商品を徹底的に少なくして、

薄暗い中でスポットライトを当て、

空間の中に浮き上がらせるように

見せるタイプ。

ごちゃごちゃとリサイクルショップの

ように物をたくさん置いて

売る店の2つがある。

前者はどんな品物を置

いても良く見えるし、

そこにはまり込むとワレワレの

茶碗や瓶でも、それこそ一流の

美術館にあるものと比較しても

遜色ないように見えてくる。

また、触れれば落ちるほどに

積み上げてある店も

何か宝物を掘り出しているような

気分になり

わくわくして必死になってしまう。

そんな積み上げ品の中にちょこっと

良いものがあれば

土の中から至宝でも掘り出したようで、

なけなしの財布を

はたいてしまう事もある。

僕はアジア各地の骨董屋を

巡り歩いているので、

そのようなカテゴリーに入る店は

どちらかと言うと警戒している。

一つしかない作品を浮き上がらせている

ような店では

できるだけ冷静に欠点を一つずつ

チェックし、値引き交渉の取掛りする。

山と積んである店では水準が低いと

言うことを頭に入れ、

その場では良いと思えたものでも、

かなり厳しいふるいに掛け、

買い付けを行っている。

一番いい店は明るくて、

見やすい展示をしているところだ。

特に値段についてはプライスカードなど

が立ててあって、

初めからこれは幾らですよというように

店の姿勢を出しているのがいい。

そんな店は買いやすく、間違いが少ない。

店舗は明るくなくてはいけない。

われわれが扱う骨董と言うのは

数百年あるいは数千年を

経てきた作品であるから、

小さな傷や直しがよくある。

それに偽物と本物が渾然一体と

なっているようなところがあるので

しっかりと物をチェックできる環境が必要だ。

明るいということはその店の

姿勢を現しているように思う。

店に入って

「ああ、ここは明るくて見やすいな」

という店では

殆どが良い買い物ができる。

薄暗くムード満点と言うのも

その店の姿勢ではあるのだろうが、

どこかその店主の胡散臭い

一面を見るようで

僕はやはり警戒してしまう。