島津法樹さんのコラム
初出は「ハイハイQさんQさんデス」(http://www.9393.co.jp/)に
2004年8月から2005年11月まで連載された「損する骨董得する骨董」です。
第32回
商品学(中国陶磁編)
4.白磁

中国の白磁は唐の時代に、
他の追従を許さない作品を焼成している。
ヨーロッパにおいて初めて白磁が焼成されたのは
なんと18世紀になってのことだ。
だからブランド好きの昨今のコレクターが
ヨーロッパの焼き物に血道をあげていることなど、
偏見かもしれないが、
僕から見れば何をやっているのだと思っている。

AD800年代、唐時代の中頃には
もう我国にも唐白磁が舶載されてきている。
平城京や薬師寺僧坊跡、平安京の西寺跡からも
白磁茶碗の完器やかけらが出土している。
それらは中国の名窯として名高い
河北省州窯の作品である。
はるばる海を越え、白磁の名品が将来されて
高級食器として宮廷や有名寺院で用いられたのであろう。

陸羽の茶経の中にも州窯の白磁茶碗のことが記されている。
また、
「唐代の李肇(りちょう)が
 内丘の白磁瓶、端渓の紫石硯、天下に貴賎なくこれを用いる」
とあるから州窯の白磁が
当時広く知られていたことが分かる。
白磁は中国陶磁の中では青磁と並んで
最も美しいものとして古くから内外の人に讃えられていた。
州窯の作品は数も少なく、
特に唐代の茶碗は専門家でも実見していないので
見逃しやすく注意していれば、値打ちで入手できることがある。

北宋期に入ると定窯の作品がある。
嘗て僕は手にとって一度でいいから見たいとおもっていたが、
今ではそれを商えるほどになった。
しかし実際の作品数は少なく
今のうちに小品でも買っておくと楽しめるものだと思っている。
定窯と同じ時期の北宋影青の作品だが、
これほど数多く優品がマーケットに出回るとは
思いもよらなかった。

35年ほど前、フィリピンのマニラで
素晴らしい影青の鉢を見つけた。
値段を聞くと350万くらいだった。
その頃そこそこの家が1軒買えるような値だったように思う。
粘って250万くらいにネゴをした。
現金の持ち合わせがなかったので、
会社の代理店から金を出してもらおうと交渉に行った。
セキュリティー上の理由で手持ちのキャッシュがないので
ちょっと待ってくれと言われた。
半日ほどかかってキャッシュを集め、段ボール箱に入れた。
当時フィリピンペソは高額紙幣がなく、
かなり大きな箱に金を詰め込んだのを覚えている。

ガードマンを雇って骨董屋へ引き返したら、
シンガポールのローさんという業者に先に買われてしまっていた。
ワーワー言っていると、
「アンタ売り先があるの?」とローさんに聞かれ
「こんな高価なもの売り先もないのに仕入をしたらだめだよ。」
と逆に説教食らったことが昨日のように思い出される。
その時の青白磁の鉢と殆ど同じものが
今10〜20万くらいで入手できるのだ。
しかし香港ではもうそろそろ値上がり気味だ。
「日本でいい物があれば買いますよ」
と香港の親しいディーラーが、時々言うようになった。
今この種の中国陶磁が世界で一番安いのが日本なのだ。