島津法樹さんのコラム
初出は「ハイハイQさんQさんデス」(http://www.9393.co.jp/)に
2004年8月から2005年11月まで連載された「損する骨董得する骨董」です。
第40回

商品学(中国陶磁編)
7.元染付−値下がりしない不思議な焼き物

元時代の景徳鎮窯で焼成された染付を
数寄者は元染付と呼んでこよなく愛好し、あこがれている。
元染付は景徳鎮窯の硬く焼き上げた白磁に
力強く、繊細なバイオレットブルーの絵付けを施したものである。
文様はそれまでの陶磁器のイメージを一変させる
格調高い絵画の世界を陶面に持ち込んだものである。
ある人は宋元画の世界を陶磁器に展開したともいっている。

この元染付こそ唯一値下がりしていない中国陶磁である。
デフレになっても価格は殆ど変わらず、
逆に今日でも確実に上昇している。
その理由の一つは
元染付は国際的に知名度が高いということにある。
一流の美術館を立ち上げようと思えば
元染付の大作の1,2点くらいはもっておかなければ
という必要性もあるようだ。

又、既存美術館でも次に中国陶磁を入れるとすれば元染付だ。
と思っているところも多い。
これからの美術品の蒐集は
あまり小さな世界だけで評価されることを
避けることが必要だろう。
たとえば茶道具で代表される日本の茶碗や香合などは
ある意味では世界的なマーケットの背景を持っていない。
そんな意味で元染付の国際性と言うのは
一つの陶器を買うための指標として捉えてよいだろう。

このような元染付けの作品も
昔から良く知られていたわけではない。
1929年英国のR.L.ボブソンが
現デビットファウンデーション所蔵の一対の大瓶に
至正11年の銘があると公表したことに始まる。
それ以後世界の陶磁研究家が様々な発表をし、
広範な人々が元染付の評価をさらに高めたのである。
元染付の伝世や出土は大陸ではあまり多くないようで、
どちらかと言えば昔中国から輸出された
仕向け地での発見の方が多いように思われる。

さらに元染付の優品の製作数も
他の陶磁器と比べかなり少ないことが
価格が安定していることにつながっているようだ。
この魅力あふれる元染付けの作品は
東南アジアの各地今も少量ではあるが発掘されている。
フィリピンのミンダナオや
インドネシアのセレベス島、ジャワ島で
大小さまざまな元染作品が見つかっている。
これらにトライするのも
コレクターとしてワクワクするテーマだ。