島津法樹さんのコラム

初出は「ハイハイQさんQさんデス」(http://www.9393.co.jp/)に
2004年8月から2005年11月まで連載された「損する骨董得する骨董」です。

第7回
中国の骨董

約20年前、中国の陶磁器や銅器は高嶺の花であった。
それもただの高嶺の花ではなくて、
それこそサラリーマンなどには絶対に買えないものと思われていた。
それが17,18年前から中国全土で発掘された作品が
一挙に世界市場に出回り出した為、底なしに暴落した。
たとえば2000年前の漢緑釉の壷などは
1970年頃少し良いなと思うと500万円くらい、
傷があったり文様が悪かったりしても300万円くらいした。
それが今ではかなり良いものでも50万、
悪いと5万とか10万円くらいでいくらでも手に入る状態だ。
またアンダーソンのような古代土器になると嘗ては、
4〜500万円くらいはした。
今ではそれが1,2万円でいくらでもある。

中国全土でありとあらゆるところが掘り返され、
どのようなルートを辿ってやって来るのか
中国骨董が津波のように押し寄せてきたのだ。
これはシャツや、家電商品と同じように
膨大な数を中国が輸出している為、
骨董のデフレ現象を起こしているのだ。
所詮骨董などは小さなマーケットであるから
少し量が多めに供給されると、たちまち値崩れを起こす。

それに経済学的に見ても興味ある現象が起こっている。
日本というマーケットをとらえて考えてみる。
われわれの近辺である品物を顧客が買うとする。
買った客は十年、二十年と楽しんで
それをまた骨董屋に持って来て売る。
そうすると十年、二十年のうちには
新しい顧客が骨董屋に新たに生まれているので、
店もその客に買い戻した品物を買ってもらえる。
こうするとお金と骨董がうまく回っていって
常に物のほうが若干不足気味の状態が生まれ、ビジネスが回転する。
客も損をすることが無く平和な世界が続くのだ。

しかし、昨今では骨董屋も
海外仕入を中心としてやっていく場合が多い。
そうするとお金の支払いはどんどん海外、
即ち中国へ一方的に流れてゆく。
そうして日本の骨董界のお金がどんどんと海外へ流出してしまい、
客は持っている骨董が換金できない状態になる為
(客の買い付けた価格より中国で買い付けのほうが当然安いので
骨董屋は買取を渋る)
どんどん価格が下がっていって全体が動かなくなってしまうのだ。
この状態がここ15年ほど顕著に見られる。
それが伊万里や西洋美術あるいはその他の骨董全般にも
大きな影を落としている。

一方、中国の状況はと言えば
これまで国内のマーケットはほとんどなかった。
それがここへきて少し状況が変わってきたように思われる。
明や清の骨董品は中国においても
伝世と言う形で保存されているものもある。
その為オークションなどで
当局のチェックを受けることなく売買される為か、
かなりな値段で取引がなされている。
明代以前の作品についてはほとんどのものが発掘品である為
盗掘を防止する意味で
所有の確かなものしか大っぴらに取引できなかったようだ。

しかしここにきて中国のバイヤーは
積極的に海外から物を仕入れ出した。
早晩日本やアメリカなどにある中国骨董の一部は
里帰りするような形になるだろう。
中国経済がどんどん拡大して金持ちが沢山生まれると
そのうち日本にある中国骨董は
大化けに化ける日があるかもしれない。
しかし、その時はもうほとんどのものが里帰りした後だろう。
これから中国骨董をよく勉強しておこう。