島津法樹さんのコラム
初出は「ハイハイQさんQさんデス」(http://www.9393.co.jp/)に
2004年8月から2005年11月まで連載された「損する骨董得する骨董」です。
第76回
商品学(ラオス編)
3. 民芸品―
河海苔、乾燥納豆、熊の胆、売れ筋商品ぞろぞろ
 


昨今、ご多聞に漏れず、
ここラオスでも観光客が沢山訪れるようになった。
世界文化遺産とやらで、
北部のルアンプラバンもずいぶんと有名になった。
メロンテンプルにつながる表通りなど、
夜店のように人がぞろぞろ歩いている。
かつては静かな街で
午後5時になると全部の店が閉まってしまい、
僕など手持ち無沙汰で身体の置き場もなかったが
今ではそんなことはない。
通りには色鮮やかな山岳民族の衣類や籠がぶら下がっている。
このあたりの目端の利く奴が
民芸品を大量生産して土産品にしてしまったのだ。

僕はそんなところを避けて、良いものを探し出すのに
観光化の波がまだ及んでいないところを
現地に詳しい人から情報を取って尋ねている。
不便なジャングルの中や険しい山岳地の
少数民族が作っているものの中には
これ一品というものがまだある。
ラオス北部、ビルマ国境や中部のベトナム国境などだ。
そこには観光客が行かないので面白い掘り出し物が沢山あり、
それにとても安い。

チークで出来たココナツはずしの道具。
動物を捕獲する為の仕掛けの棒、
取っ手に面白い彫刻を施した木製のスプーン。
入れ墨用の針棒。阿片パイプなどなど、
昔から大切に伝えられている魅力的なものがある。
スポットでも当てると
部屋の雰囲気を一変してしまうくらいの力を持っている。
額装にでもすれば有名画家の絵より力があるかもしれない。

そんな民芸品を探していた時、
メコンに注ぎ込む巾2,30メートルくらいの
水の澄んだ美しい川に出会った。
「損する骨董、得する骨董」というテーマだが
この項では耳寄りの話も紹介してみよう。

近くの村人が竹竿の先に針金を曲げたもので
流れてくる河海苔を採っていた。
青海苔みたいなクロレラ風の大きなヤツで、
どういうわけか上流からどんどん流れてくるのだ。
村人は上手に針金に引っ掛け、
バケツのような形をした籠に入れていた。
これをきれいに川水で洗って天日に干し、
板状にしてゴマとゴマ油をつけ焼いて食べるのだ。
僕はそれを試食した。
パリッとして青海苔の香りがする。
結構美味しいし、翌朝トイレで感激した。
僕は旅行中大概便秘でとても苦労するが、
その朝は立派なやつがしっかりと出た。
これはひょっとすると骨董や民芸品より儲かるかも!


 
 
メコン河夕景 (画像はラオス舟)