「これを、買ってしまったのですか?」 とつい詰問調で尋ねてしまった。 「ハイ、成り行きで買うことになったのです」 と、ばつが悪そうに奥さんのほうを向いた。 「旅行社のツアーで中国旅行に行ったのです。 博物館に案内され、説明を聞いていると スタッフから、ここの収蔵品を売りますからどうですか、 と言われて心が動きました」 と言う。 彼は博物館の立派な宝物を見た後だったので、 保証書の作品を200万円で買うことにした。 雰囲気に飲まれ、大変な宝ものだと錯覚したようだ。 それに博物館を案内した人を、 美術館の人と信じ込んでしまった。 しかも高価な美術品を 日本まで大手○○旅行会社が保障して送ってくれるという。 だから200万円くらいは安いと考えたようだ。 しかし日本に帰ってきてよく考えてみると不安になった。
「幾らくらいするものですか?」 と聞き、彼は僕の口元をじっと見ている。 「悪いけどこれは値が付きませんよ。 工芸品だから、全く同じものというわけにはいきませんが、 この辺りで5万円もあれば十分集まります」 と言うと、ご主人のほうはがっくりしてしまった。 奥さんはそれ見たことかと胸を張った。 「だけどこれ、5万円で買ってくれといわれたら僕は断りますよ」 と言うと、奥さんが大きく頷いた。 「やっぱり骨董はダメね!」と言うではないか。 「奥さん、骨董がダメなんじゃなくて、 選ぶものがダメなんですよ」 と言うとしょぼんとしてしまった。
・ 博物館の収蔵品だという触れ込み ・ 館のスタッフだと言う説明員(本当はその館付属の売店の店員) ・
高価な美術品の雰囲気に酔った勘違い ・ 日本の大手旅行会社の信用と運送保障 ・ 立派なホルーダーつきの保証書
骨董にはこんな飾りは一切無いのです。 自分の目を肥やし人に依存せず、 楽しみながらコツコツ勉強して収集するのが本当のやり方です。
それにしても皆さん気をつけてください。 世間には本当に悪い奴がいるのです。 中国、インドでだまされるケースが圧倒的に多いですよ。 あるところなど美術館とグルのようですよ。 よーく気をつけよう。
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