静かに目を閉じると 僕には20年後の平均的な日本人の住まいが浮かぶ。 室内を覗いてみよう。 今よりスペースは1.5~2倍ほど広くなっているだろう。 家電製品の究極な薄型化(小型化ではない) あるいはビルトインによる省スペースがもっともっと進む。 情報機器によって本や新聞など家庭のペーパーレスも進む。 建築技術の高度化と人口減による地価の横ばいが、 充実した住環境を生む。
そのような状況の中で住環境に何を求めるかが、 20年後の大きなテーマになるだろう。 人々は今、特殊な趣味として一歩距離を置いている骨董なども 個性的なインテリア・アイテムとして どんどん取り入れるようになるだろう。 その選択の一つに「アートのある暮らし」、 心の満たされる生き方がある。
たとえば、緑の好きな人は 観葉植物に囲まれた室内にゴーギャンや田中一村の絵をかける。 時々波の音や磯の匂いなどもすることだろう。 あるいはクメールや、ミャンマーの神々の彫像を取り入れ、 柔らかいスポットが射している。 棚には古伊万里やデルフトのコーヒーカップが品良く置かれる。 その部屋で生活することが至福であるような生活空間の演出を 本物で楽しむ。
これまではテクノロジーによって 便利さを追及することが目的のような生活だった。 しかし20年後は個性的な生き方を表現することによって、 心地よい空間を作り上げる。 それに骨董は大きな役目を果たすようになる。
このコラムは主として、 売り買いによる損得という言葉を多く使ってきたが、 僕が最後に皆さんに言いたいのは、 自分の好きな骨董を手に入れ、 楽しむことが一番大切だということです。 20年後にはきっと分かってもらえる。 その時はこのコラムを読んでよかったなと思ってもらえる。 邱先生、よいチャンスを与えていただきました。 心よりお礼申し上げます。 担当の角田さん及びHIQ編集部皆さんには いろいろご迷惑をかけました。
私はこの後、3つのことにチャレンジします。
1、クメール美術の最高の本を書きます。 2、アンドレ・マルローの王道を越える本を書きます。 3、もしも50のクライシス・・・平均年齢を生き抜く賢者の知恵
長い間このコラムをお読みいただきありがとうございました。 読者の皆さん、また私の著書でお会いしましょう。 バイバイ
島津法樹
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