元時代の景徳鎮窯で焼成された染付を
数寄者は元染付と呼んでこよなく愛好し
あこがれている。
元染付は景徳鎮窯の硬く焼き上げた白磁に
力強く、繊細なバイオレットブルー
の絵付けを施したものである。
文様はそれまでの陶磁器のイメージを
一変させる格調高い絵画の世界を
陶面に持ち込んだものである。
ある人は宋元画の世界を陶磁器に
展開したともいっている。
この元染付こそ唯一値下がりしていない
中国陶磁である。
デフレになっても価格は殆ど変わらず、
逆に今日でも確実に上昇している。
その理由の一つは
元染付は国際的に知名度が
高いということにある。
一流の美術館を立ち上げようと思えば
元染付の大作の1,2点くらいは
もっておかなければ
という必要性もあるようだ。
又、既存美術館でも次に中国陶磁を
入れるとすれば元染付だ。
と思っているところも多い。
これからの美術品の蒐集は
あまり小さな世界だけで評価される
ことを避けることが必要だろう。
たとえば茶道具で代表される日本の茶碗や
香合などは
ある意味では世界的なマーケットの
背景を持っていない。
そんな意味で元染付の国際性と言うのは
一つの陶器を買うための指標として
捉えてよいだろう。
このような元染付けの作品も
昔から良く知られていたわけではない。
1929年英国のR.L.ボブソンが
現デビットファウンデーション所蔵の
一対の大瓶に至正11年の銘があると
公表したことに始まる。
それ以後世界の陶磁研究家が
様々な発表をし、広範な人々が
元染付の評価を更に高めたのである。
元染付の伝世や出土は大陸では
あまり多くないようで、
どちらかと言えば昔中国から輸出された
仕向け地での発見の方が
多いように思われる。
さらに元染付の優品の製作数も
他の陶磁器と比べかなり少ないことが
価格が安定していることに
つながっているようだ。
この魅力あふれる元染付けの作品は
東南アジアの各地今も少量ではあるが
発掘されている。
フィリピンのミンダナオや
インドネシアのセレベス島、ジャワ島で
大小様々な元染作品が見つかっている。
これらにトライするのも
コレクターとしてワクワクするテーマだ。
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