島津法樹さんのコラム
初出は「ハイハイQさんQさんデス」(http://www.9393.co.jp/)に
2004年8月から2005年11月まで連載された「損する骨董得する骨董」です。
第98回
商品学(インド編)
インド列車事情―ビル・ゲイツになる可能性を秘めたニューデリー駅開発
 
ニューデリー駅


首都ニューデリーは人口1,370万で、東京をしのぐ大都会だ。
この駅がものすごかった。
何にもない舗装されていない広場の中に
スレート葺のプラットフォームの屋根だけが、
人だかりの向こうに見えていた。
土ぼこりが舞い上がり、
頭の上にトランクや大きな荷物を乗せて
喚き回る人々がいるところが駅だった。

車から降りて人ごみに揉まれながら15分ほど歩いた。
仮設のような5段ほどの鉄製の階段を上がると
そこがプラットフォームだった。
駅は駅舎も何もないプラットフォームと
それをつなぐ、日本の横断歩道くらいの陸橋が
1本あるだけだった。

どこもかしこも人、人、人でものすごく混雑していた。
外国人だと見ると、
どこから沸いてくるのか物乞いがぞろぞろと付いてきて、
とてもわずらわしい。
線路を見ると列車の中から落としたのだろう。
人糞が山盛りになって一面落ちている。
そこを牛と荷物を担いだポーターがうろうろしていた。
彼らは意外と踏んづけたりはしていない。

東京で言えば、丸の内と八重洲くらいの一等地が
ボカッとあいているのだ。
宝の山と言いかえてもいいような広場だ。
これほど勿体ことは他にないだろう。
特に土地信仰が薄れたとはいえ、
土地=金という観念の強い僕ら日本人が見れば
なぜインド人がこれほうっておいたのか理解できない。
駅ビルでも建てれば
即、ビル・ゲイツをしのぐ世界一の金持ちになれる。
それで早速その方面のエキスパートに聞いてみた。

旧宗主国、イギリスの鉄道をまねているという、
ニューデリー駅は150年ほど前からまったく変化していないのだ。
よく見ればインド国中どこへ行っても、
駅は同じパターンだった。
ニューデリー駅開発をやって、
世界から金を集めそれを転がしたらどうだろう。

インドの国鉄はこれから数年間
ものすごい資金を必要とするだろう。
それだけに壮大なビジネスの可能性を持っている
注目すべきものだ。
この国の鉄道総裁の談として
5、6年後に新幹線を作る計画を持っているらしい。
投資規模は1兆円を越すと見込んでいる。
それを呼び水に世界中の金が集まってくるような予感がする。
骨董とは関係のない話をしたが、
いま少しホットなインド情報をお知らせしたい。

 
駅構内の牛