島津法樹さんのコラム
初出は「ハイハイQさんQさんデス」(http://www.9393.co.jp/)に
2004年8月から2005年11月まで連載された「損する骨董得する骨董」です。
第31回
商品学(中国陶磁編)
3.龍泉窯青磁―東西交易の主役

龍泉窯は古くから中国を代表する青磁の一大産地である。
この窯の起源は一説によると東晋時代といわれている。
しかし、この地で作り出された最も古い作品は
確認できるものでは北宋期である。
龍泉窯で大量に美しい作品を作り出したのは
南宋以降のことである。

南宋時代の作品は青緑色の透明感がある粉青色であり、
砧青磁とも呼ばれている。
この時代の作品はわが国においてかなり数が伝世している。
南宋時代の龍泉窯作品は
東南アジアや内モンゴル、インドやエジプトまで
輸出されていたようだ。

最上の作品
(釉色に曇りや変色がなく色調が良い)花入や香炉の遺品は
極めて高価である。
それらは輸出向きに作られていた為か
中国本土には伝世しているものが少なく、
昨今の古美術品のデフレ傾向には関係なく
価格がしっかりしている。
恐らく今後も数多く発見されることはないだろうから
値段はむしろ上向き加減になるだろう。

元時代には南宋時代よりさらに多く作品を焼成したようだ。
アジア大陸と海の殆どを制した元帝国は交易ルートを築き上げ、
有力な輸出商品として陶磁器を焼成した。
そのようなわけで元の龍泉窯青磁は膨大な量が輸出され、
東南アジアを歩くと殆どの遺跡から出てくる。
まだまだアジア全域の出土傾向は収まりそうにないので、
価格は不安定な面がある。
さらにこの時代の沈没船が新たに発見されていることにより、
マーケットには新しい元時代の作品が現れてくるだろう。
しっかりと良いものを選ぶことが大切。

また、出土する時代別の陶器の量によって
様々な中国の顔あるいは当時の世界が分かって面白い。
出土量が一番多いのは明末頃の染付作品である。
この時代は生活必需品と思われるものが
交易の中心であったようだ。
次いで元時代の青磁である。
これらは鉢、大皿、壷などのように、一般の庶民が用いるものと
香炉や花生のように特別な階級が用いる作品が混ざっている。
さらにこの元時代の作品の中に特筆されるものとして
染付作品がごく少量発見される。
(これは後記するのでこの項では省略する)

第三位は明代初期から中期頃の青磁であるが、
これはもう雑器といってよい、力のない濁った色調の作品が多い。
このように陶磁器の発掘例を見て時代の移行を考えるのが
陶磁器コレクターの楽しみである。
龍泉窯の青磁作品は前記したように
生活雑器から高級な貴族階級の用いる作品まで
幅広いジャンルを作っている。

そして各時代において特色ある作品を焼成しているので、
蒐集には時代や形状を良く考えてゆかねばならない。
僕が好きなものはやはり南宋時代の作品で、
香炉や茶碗、花生が良いと思う。
また、元時代の作品においては
魚文が貼り付けてある盤などが動きがあって面白い。
青磁作品は時代があって
形状が良くても釉薬の発色が特に大事だから、
常日頃美術館などへ足を運んでよいものを見ておこう。