島津法樹さんのコラム
初出は「ハイハイQさんQさんデス」(http://www.9393.co.jp/)に
2004年8月から2005年11月まで連載された「損する骨董得する骨董」です。
第69回
商品学(カンボジア編)
2. ブロンズ―銀行の担保にもなる仏様


カンボジアのブロンズ作品は文句なしに世界最高峰だ。
この地ではBC2世紀からAD1世紀ごろに始まる金工技術を持っていた。
その基盤の上に5,6世紀頃インドの
優れた仏・神将の製作技術が加わった。
優れた仏師が心打つ作品を作り出している。

特にダヴァラヴァティの仏像は
インドのグプタ様式を表現している。
それにクメールの形式も取り入れつつ、
精神性の高い作品を鋳込んでいる。
この時代の作品は世界の仏像収集家に人気を博している。
5,6世紀といえば弥生後期から古墳時代に当てはまり、
白鳳時代をしのぐものだ。

時代がやや下る9,10世紀のヒンドゥーの青銅仏も
各地の寺院から発見される。
中には目にルビーが象嵌されたものとか、
耳飾、ネックレスに黄金を用いた豪華な作品もある。
こんなものが我々の身近で発見されれば即、国宝指定だ。
残欠部分でも文化財の指定を受けるような内容を持っている。
勿論カンボジアにおいてもその評価は高く、
国立博物館などで展示されている。

11世紀から13世紀はクメール美術の絶頂期といわれる
バプオン期からアンコールワット期、バイオン期だ。
国土も膨張しインドシナ半島の大半を支配した。
クメールではそれぞれの寺院の名が
時代を区分する呼び名となっている。
たとえばアンコールワット期と呼んでいるのは
12世紀に建造されたアンコールワットの名をとっているのである。
この時代に沢山の寺院が造られ
その要請もあって大小様々なブロンズの仏・神将が作られている。

クリスティーズやサザビーズの
アジアオークションを覗いてみれば
クメールの作品はひっくり返るぐらいの高値で落札されている。
このような素晴らしい美術品が
結構アジアのマーケットで販売されている。
しかも何とか手の届く辺りにあるのだ。
15,16センチくらいの寸法のよい座仏が60,70万くらい、
10〜12センチくらいのバプオン期の女神像が
30〜40万くらいで入手できる。
僕は昨今かなりなものに出会っている。

仏像や神将だけでなく、
五鈷杵、三鈷鈴、輿飾り、宝剣、鏡などの法具なども
今値打ちで入手できる。
これらは皆我国の歴史でいうと
前記したように鎌倉以前の作品なのだ。
それではそんな遺品が
インドシナ半島に沢山あるのかというと
「ノーなんです」。
日本では寺院やコレクターが大切に保管しているので
仏像など無数にある。
それでも古い金銅仏などは時代がよいと非常に高価である。

ある時タイで27万ドルといわれた7世紀の仏様を
あるコレクターが買い取った。
一足違いで買い逃した銀行家が
「あれだったら担保にとってもいいな」
といって僕にウインクした。
東南アジアでは実際に銀行は良い美術品を担保にとっている。
カンボジア美術は歴史的破壊や、
高温多湿のため損傷がはげしく、残存するものは少ない。
素晴らしい作品を見つけましょう。
独断と偏見によれば
日本美術より遥かに国際的なのですから。

 


 
   
 
クメールバプオン期三叉鉾(11世紀)
 
クメールバプオン期千手観音像(11世紀)