3世紀のイクシュヴァーク朝、 南インドのクリシュナ川の下流 アーンドラやアマラーヴァティやナーガルシュナコングにおいて 仏教が盛んになり多くの寺院が建立された。 それらの都市の中でもアマラーヴァティは首都であり、 巨大な寺院跡が今もそこここに見られる。
インドの仏像は大きく分けて このマトゥーラ様式、グプタ様式、 アマラーヴァティ様式とパーラー様式ぐらいをとらえておくと 理解しやすい。
アマラーヴァティは薄い緑色の乳白色の石灰岩を用いており、 しなやかで柔らかい表現がその特徴だ。 インドは北部中部南部に様々な石を産出するが、 中南部には石灰岩が比較的多く、 寺院の建造や仏像彫刻にはそれらの材を用いている。 アマラーヴァティの仏像は通常、 偏祖右肩に大衣を纏っていて、 衣の左側を上方に引き上げているのが特徴だ。 袖が長く下に垂れ下がっている。
このアマラーヴァティ様式は 南インドからスリランカに渡り、 東南アジアにも広く影響を与えた。 特にタイの半島部からインドネシアスマトラあたりに 勢力を張ったシュリビジャヤ王国の仏像は、 このアマラーヴァティ様式を正確に受け継いでいる。 面長で穏やかな顔立ちの額中心に白毫を置く。 石灰岩は砂岩などと違って 石の目がある為大型の作品が作りづらい。 従って殆どの仏像は前後の厚みがない。 このような石質による彫像の限界は タイの石灰岩や片岩を用いた石像彫刻にも同じ見られる。 一部の作品において腕などを別の石材で作り、 はめ込んでいるケースもある。
この時代の仏像には装飾はあまり見られず 極めてシンプルである。 インド彫刻は比較的安価である。 それに仏像を刻んでいても抹香臭くなく ニューデリーの美術館で見た像は インテリアとしてもとてもよくあうように思えた。 まだインド美術は我国ではポピュラーとはいえないが 今後伸びる分野だろう。 なぜなら現在の建築が木材からコンクリートを使用するようなり、 無機質である。 その空間に石の美術品を持ってくることによって バランスが取れる。 仏像は穏やかな精神性をその空間に漂わせるのだ。
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