初出は「ハイハイQさんQさんデス」(http://www.9393.co.jp/)に
2004年8月から2005年11月まで連載された「損する骨董得する骨董」です
第17回
 

韓国美術界の変化の兆し

 

嘗て犬猫病院で柴犬に

よく似たやつを見た。

あまり可愛いので手を出すと

「うーっ」と歯をむき出し

うなった後、

診察台に首を落とした。

よほど重症なのに

根性があるヤツだった。

獣医に聞くと韓国の在来種

珍島犬で気が荒く、

飼い主でも苦労すると言う。

病気でへとへとになっていても

ファイトファイトで来る姿は

健気なところがある。

我が家の柴犬は可愛がりすぎたのか

近頃ウーッとかワンワンという声を

聞いたことがない。

妙に現代的でおとなしくなっている。

犬の比較で人を語るのは

問題があるかもしれないが、

とにかく韓国人の商売人は

珍島犬と同様パワーがある。

それに言い出したら最後まで聞かない。

「シャチョーさん、この鉢完全ね、

修理ないよ。」と言うから

ルーペで細かくチェックしていると

あれこれうるさく耳元で吠え立てる。

「ここんとこ直しがあるじゃないか。

ひびも入っているし」と言うと、

鉢をひったくって噛みついた。

カリカリと鉢に噛みついて、

直し部分の塗装とガラス釉の

硬さを図っているのだ。

「こんなの問題ないです。」と

はぐらかしてしまう。

「あんた、完全と言っているけど

ひびが2本もはいっているよ」

「ひびないねえ。山傷」

明らかに傷や皹があっても

絶対に認めない。

認めて話し合い、値段を

決めればよいと思うが、

譲ることは負けることだと

思っているようだ。

それでも10年前と比べれば

韓国ディーラー達はずいぶんと

変わってきて紳士的になっている。

その彼らは今、嘗てのように

韓国美術だけではなく、

中国やヨーロッパの品物に

興味を示しつつある。

残念ながら日本美術に対する

興味はまだまだ低いようだ。

中国やヨーロッパの作品を

ソウル辺りに持ち込み、攻めていくと

韓国マーケットに大きく

アプローチできるかもしれない。