初出は「ハイハイQさんQさんデス」(http://www.9393.co.jp/)に
2004年8月から2005年11月まで連載された「損する骨董得する骨董」です。
第18回
 
大阪商人と反対のドイツ人商習慣
 
 
 

昔会社勤めをしていたときに

フランクフルトへ骨董品の視察兼

買い付けに行ったことがある。

大きな店構えでフランクフルトでも

一流の店だった。

日本の漆やデルフトのタイルなど

気に入ったものがあったので

値段を聞いた。

漆の箱は日本円で30万くらいだった。

こちらも会社の看板を背負って

行っているので

かなり強気でバンバン値段交渉をした。

しかし、鼻先であしらわれて

やっと3万円引きの27万

ということになった。

だいぶフラストレーションが

溜まったが27万を飲んだ。

いざ支払いと言うときカードで

いいかと聞くと

キャッシュでくれといわれた。

マルクの持ち合わせがなかったので、

トラベラーズチェックで支払うと

言ったら、それも断られた。

チェックを銀行で交換して

こいというのだ。

僕はこのときドイツの商売人の

融通のきかない一面を見て

しまったような気がした。

結局ここでは何も買うことが

できなかった。

それに僕が店を出るとき振り返ると

店員は「ダンケ」とも言わず、

フンという感じで奥に入ってしまった。

他の店に回ったが似たり寄ったりだった。

東洋人に対する蔑視があるのか、

と思っていたら

アメリカ人も同じように

扱われていたので

恐らく全ての客に対して

この態度なのだろう。

もう一つ経験したこと。

骨董というのはガラスや陶器、

木工から金工まで

それこそ人間が作る

あらゆるものが対象である。

が、こんなことを言われた。

「どんなアイテムをお探しですか。」

「ええ、ちょっと見せてください。」

ただなんとなくウインドショッピング

的に見ていた。

「あなたが言っていることは

よくわからない」

何故アイテムを決めて

入ってこないんだと言うような態度だ。

「どうしてですか。僕の気に入るものを

探しているのです。」

「だからあなたの探しているものの

アイテムをお聞きしているのです。」

とこんな風に議論になってしまった。

どうしても売らなければならないとか、

何とかサービスをして

買ってもらおうというような

売り手がへりくだった感覚は

まったく見られなかった。

こんなことをやっていては

大阪ではきっと

店は潰れてしまうだろう。

このことは何もドイツだけではなくて

ヨーロッパ全体の小売商に

流れているムードだ。

日本の愛想の良い骨董屋が懐かしい。