島津法樹さんのコラム
初出は「ハイハイQさんQさんデス」(http://www.9393.co.jp/)に
2004年8月から2005年11月まで連載された「損する骨董得する骨董」です。

第170回

儲かる骨董-実行編
5、虻も蜂もつかむタイプ-脱サラ準備、趣味は実益
李朝初期花三島鉢

骨董収集は自分の好きなものを手に入れるのだから
とても楽しい。
しかし、数百年の時代を生きて
世の中に二つとないものであるから、
多くの人が欲しがり当然高価だ。
それにコレクターとして場数を踏むと目が肥え、
自然と高価な作品を選ぶので
経済的な事情で買いにくくなってくる。

ある石油元売会社のオーナー社長が
「もう少し小遣いが豊富にあったら」
と嘆いた話など事実はどうあれ、さもありなんと思われる。
だからコレクターの一部は
骨董屋の店頭で思わぬ掘り出し物がないかと探したり、
めちゃくちゃ値切り倒したりする。
また、将来骨董屋でもやって、と楽しい定年後を考えたりもする。

僕がやったサラリーマン骨董を紹介しよう。
35年ほど前、サラリーマンの僕の給料は3万円くらいだった。
出張で釜山に行き、プライベートタイムは骨董屋巡りをした。
日本では古い韓国の茶道具が高価で、
李朝茶碗や本歌の三島作品などが珍しいときだった。
しかし韓国ではそうでもなかった。
高麗青磁や染付の作品の方が高価だった。
それに日本と韓国の為替の関係でとても安く感じられた。
僕の使える金はそんなになかったが、
毎月5000円ほど骨董を買った。(現在では5、6万くらい)
そんなわけだから僕は無駄遣いを一切しなかった。
ゴルフもマージャンも飲みにも行かなかった。
遊びより骨董を買うほうがよほど楽しいし、
手に入れた茶碗や皿を眺めているほうがうれしかった。
同僚からは変わった奴だといわれていたかもしれない。

ある時会社の友人に
「そんな、ぼろぼろの皿買ってどうするの?
 ゴルフにでも付き合えよ」
と言われ、しばらく練習場通いをやった。
そしてコースに出た。
会社がゴルフ場を幾つか作り、
会員権の社員販売をしたので友人は一口買ったようだ。
それで誘われたのだ。
小さなボールをカチンと打って暑い太陽に焼かれながら、
玉探しをやるなんてとても耐えられなかった。
以後一度もグリーンを歩いたことがない。
(会員権は確か180万だったと思うが、
 バブルの時3000~4000万に跳ね上がったらしい。
 それが今は500万くらいに落ち着いたと聞いている。
 僕が1枚5000円で買った三島の皿は今5万円はしている。)