インドネシアは人口二億六千万人の
世界最多のムスリムを抱える国である。
この国の仏教人口は恐らく統計的には
記録できないほどの数だろう。
しかし嘗てはこの国でも仏教が
盛んであった。
インドネシアのジャワ島には
有名なボロブドールの仏教遺跡があり、
東南アジア四大仏教遺跡の
一つとも言われている。
8,9世紀に建立されたもので、
高さ25メートル、底辺の一辺が
140メートルほどの巨大なものだ。
階段状ピラミッド型の特徴ある
大乗仏教寺院である。
このような仏教遺跡を建造する
宗教的エネルギーは
仏像やそれを装飾する法具・装飾品などに
すばらしい美術品を生み出す。
さらにスマトラ中部パレンバンには
このボロブドールより古い7世紀頃の
シュリビジャヤの仏教遺跡がある。
インドネシアの古代の仏像は
時々世界的なオークション会社の
東南アジア美術展に出品されるが
非常に高価だ。
2004年秋のアジアン・フェアーに
8,9世紀のシュリビジャヤ青銅仏が
出品されていて、
25〜30万ドルと表示されていた。
インドネシアにおける
シュリビジャヤ美術は非常に貴重だ。
僕など30年近くインドネシアの
各地をうろついているが、
いまだにシュリビジャヤや
ボロブドゥールの青銅仏など
買いつけたことがない。
銀行家のチャンさんには
幾度か厳重な金庫の中から取り出して
見せてもらったが
結局商談には至らなかった。
ところがここだけの話だが、
タイではシュリビジャヤの仏像が
比較的数多く発見されている。
シュリビジャヤ王国の都は
スマトラ中部、インドシナ半島側
パレンバンにあったとされているが、
実はタイのチャイヤにあったかも
しれないといわれているのだ。
そんな関係でタイから同時代の仏像が
発見される場合がある。
さらに驚くべきことに
僕は二十数年前フィリピンの
ミンダナオ島において
シュリビジャヤの仏像を
入手したことがある。
きっと海洋国家である
7,8世紀のシュリビジャヤの人たちが
船に積んであちこち回っていたのだろう。
そんな仏像がひょこっとしたことで
値打ちに入手できるチャンスがある。
場所を変え、仕入れ地を発見して
売り場を考えると
この世界はまだまだビジネスになる。
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