始めてネパールを訪れた30年前、 カトマンズには珍しい骨董品がたくさんあった。 信じられないものもあって、 すごいカルチャーショックを受けた。 人間の頭蓋骨二つを頂上部分で繋ぎ、 皮を張ってデンデン太鼓にしたもの。 大腿骨に穴を開けて作ったラッパもあった。 恐ろしいことに髏に漆を施し金箔を置いた碗まであって、 それらが店先に山のように積んであった。
僕はその時これこそ究極の売り物ではないかと思った。 横を通り抜ける時、触れないようにすり抜けた事を 今でも覚えている。 それ以後幾度かカトマンズには行ったが、 昨今では当時ほど店先に並べられていないところを見ると 少しずつではあるが売れてしまっているのだろう。 恐ろしいことだ。
その時は友人と二人で行ったのだが、 彼は何事にもこだわらないタイプだった。 僕がとめるのも聞かず頭蓋骨のデンデン太鼓と髑髏の、 人骨のどこかの部位で作った数珠を購入してしまった。 彼は持って帰ってしばらく家のどこかに飾っていたのだが、 だんだん憂鬱になったのか、 ある日僕に「あれ譲ろうか?」と聞いてきた。 僕は即座に強く断った。
このコラムを読んでいただいている方には 分かっていただけるかと思うが、 私は厳しい取引はするが、やさしい面もあると自負している。 かわいそうな立場の人や犬猫牛などにはう~んと同情する。 骨董品にしても墓碑や明らかに骨壷のようなものは 取り扱わないようにしている。
(次回に続く・・・・)
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