島津法樹さんのコラム
初出は「ハイハイQさんQさんデス」(http://www.9393.co.jp/)に
2004年8月から2005年11月まで連載された「損する骨董得する骨董」です。
第89回
商品学(ネパール編)
経典カバー―買っていいもの、悪いもの
 
 14世紀 チベット経典カバー 


始めてネパールを訪れた30年前、
カトマンズには珍しい骨董品がたくさんあった。
信じられないものもあって、
すごいカルチャーショックを受けた。
人間の頭蓋骨二つを頂上部分で繋ぎ、
皮を張ってデンデン太鼓にしたもの。
大腿骨に穴を開けて作ったラッパもあった。
恐ろしいことに髏に漆を施し金箔を置いた碗まであって、
それらが店先に山のように積んであった。

僕はその時これこそ究極の売り物ではないかと思った。
横を通り抜ける時、触れないようにすり抜けた事を
今でも覚えている。
それ以後幾度かカトマンズには行ったが、
昨今では当時ほど店先に並べられていないところを見ると
少しずつではあるが売れてしまっているのだろう。
恐ろしいことだ。

その時は友人と二人で行ったのだが、
彼は何事にもこだわらないタイプだった。
僕がとめるのも聞かず頭蓋骨のデンデン太鼓と髑髏の
人骨のどこかの部位で作った数珠を購入してしまった。
彼は持って帰ってしばらく家のどこかに飾っていたのだが、
だんだん憂鬱になったのか、
ある日僕に「あれ譲ろうか?」と聞いてきた。
僕は即座に強く断った。

このコラムを読んでいただいている方には
分かっていただけるかと思うが、
私は厳しい取引はするが、やさしい面もあると自負している。
かわいそうな立場の人や犬猫牛などにはう~んと同情する。
骨董品にしても墓碑や明らかに骨壷のようなものは
取り扱わないようにしている。

(次回に続く・・・・)