2月9日にインドへ行った。 ベナレス、カジュラホ、タージマハールなど 石造建築は壮大で繊細な石彫文化の頂点を極めるものだった。 また、装飾の石像などは計算されつくした緻密な中に 素晴らしい芸術性を持ったものだった。 インド人は世界で最も石をよく知り、 巧みな技術を持った民である。
インドを8日間ぐるっと見ただけだが、得るものは多かった。 僕はアジアの石彫はすべてインドが出発点だと感じた。 中国の石窟寺院や石像も、 カンボジアの巨大なアンコールワットや インドネシアのボロブドール、 アフガニスタンのバーミアンも インドの石文化の一部なのだとおもった。
これほど素晴らしい石文化を持ったインドだが、 その実態はすごかった。 とにかく汚いのだ。 糞尿にまみれた国だった。 牛がいたるところに糞をし、 べナレスの路地など、 数百年前建造された美しい建物がまったく目に入らなかった。 ただただ糞を踏まないよう下を見続けて歩いた。 帰国して約1ヶ月が経つが 今でも目をつぶるとその光景がはっきりと残っている。
地面に『べチョッとした』大きな牛のウンチが落ちていて それが2、30%を占める。 そこら中にアンモニアの匂いが強烈に漂っていた。 回収する人がいるのだろう。 町のあちこちに形を整えてこの牛糞が干してあった。 燃料に用いるのだ。 それでチャパチィというパンを焼いていた。 これこそ究極のエコサイクルといえるだろう。 おかげで今回もきつい下痢をした。
旅の途中、ガイドに耳寄りな話を聞いた。 今インドはあちこちで工事ラッシュに突入しつつあるらしい。 それで現場を掘り返していると 時々素晴らしい古代の石造が出土するのだそうだ。 それらを美術館で保管しようと思っても、 あまりにも数が多すぎて収蔵しきれないでいるとのこと。 それでオークションにかけて近々売り出すとのことだ。 広大なインドの大地から出土する美術品の量が どれだけになるのか想像するのは難しいが、 インド美術を入手する、 またとないチャンスではないだろうか。
あれほど広大で長い歴史を持った 中国の大地から出土した美術品も このごろでは消化してしまって、 逆に日本に中国人が買い付けに来ているのだ。 柳の下にドジョウは二匹、 僕はこのチャンスにかけてみようと思う。
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