ヤッコさんはスラムみたいなところを安く買って塀を作り、 高級住宅街にし、レンタルし、大もうけしたのだ。 マ、言ってみれば大統領と手を結んで地上げをやり、 高級住宅街にして賃貸しするのだ。 同じ例が今インドネシアのジャカルタでも進んでいる。 噂ではその資金源の一部に 日本人やアメリカ資本も絡んでいるようだ。
彼の家はとてつもない大邸宅だった。 玄関前にはヨーロッパ風の太い円柱が並び、 緑の芝生の中に熱帯の赤い花も風に揺れていた。 そこはマニラの都心なのだ。 車を止め、アーチをくぐるヤッコさんの足取りは軽やかで 人生を楽しんでいるようだ。
玄関を入ると壁際に15,16世紀頃のものと思われる 象牙のキリスト像があった。 「ここんとこ、値打ち者のマリヤやキリスト像は 全部ヤッコさんが買うからね」 と知り合いの骨董屋ベンが言っていた。 南宋青磁の逸品が、 スポットを浴びて部屋中央のガラスケースの中に入っている。 それやこれやを4,5点誉めると、彼はうれしそうに頬を緩めた。 骨董とは実に不思議なものだ。 普通だったら大物ヤッコさんとは 絶対に会話するチャンスがないが、 僕は今彼の家に招かれている。 そこへ奥さんがトイ・プードルの先導で出てきた。 物凄いきれいな人だった。 彼女とはマドリッドで出会い、 マニラに来てもらったのだとヤッコさんはのろけた。 奥さんも家もインテリアもすべてに最高を追い求めている。 それが彼の人生のコンセプトなのだろう。
彼に元染の大皿と壺を見せてもらった。 見込みに牡丹唐草が力強く描かれた素晴らしいものだった。 壺の側面には魚が悠然と泳いでいる。 クリスティーズのオークションで 同様の壺が2億円ほどだったのを思い出した。 (この項続く・・・・)
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