立秋とは名ばかりで、厳しい暑さで御座います。 今年の暑さは何時になっても緩む様子がなく、 毎日毎日熱帯夜続きで遣りきれません。 ・・・・・中略・・・・・ 残暑未だ衰えを見せず、 兎角悪疫の流行しがちな折柄、御自愛を祈ります。
写真5枚同封 2005年○月○日 氏 名 ------------------------------------------------
上記差出人は韓国で製薬会社を営む現在85歳になるKさんだ。 日本の占領時代に教育を受け、厳しい時代を生き抜いてきた方だ。 終戦後彼は韓国政府の人事院に長く籍を置き、 50代後半で自分の会社を起こされた。 この人と接すると僕は背を伸ばし態度を改めてしまう。 彼の話し方、ボキャブラリーの豊富さ、風格などがそうさせる。 お金や地位などチラッとも見せていない。 いわゆる教養というものがにじみ出ているのだ。
「どうしてKさんはこんなに文章や会話がお上手なんですか?」 と聞くと 「私くらいの年代の韓国人は きちんとした日本の教育を受けましたから」 と言うのだ。 いろいろとあるけれど 人を作る教育の質の高さを感じさせるKさんの言葉だった。
ある時そのKさんが白鳳時代の青銅仏の写真を送ってきた。 「この仏像が売りに出ていますが、本物でしょうか」 と言う問い合わせだった。 箱書きは、日本人なら誰もが知っている有名な彫刻家のものだ。 26,27センチでの品で、価格は5000万円くらいだと言う。 白鳳時代の青銅仏であれば決して高くはない。 しかし、海外に渡った日本の骨董品の中には いささか、きな臭いものモノもあるので 彼と幾度か手紙を往復させた。
「島津さん、良く分かりました。 この仏像は取り扱わないことにします」 と言ってきた。 因みに、本歌(骨董では本物のことをほんかと言う)であれば、 2億円くらいする。
そんな出来事の後、3ヶ月ほどして ソウルのYさんという一流の骨董商がやって来た。 「日本のとてもよい仏像があるが、買いませんか?」と言う。 そのときKさんが送ってくれた写真の白鳳仏が目に浮かんだ。
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