島津法樹さんのコラム
初出は「ハイハイQさんQさんデス」(http://www.9393.co.jp/)に
2004年8月から2005年11月まで連載された「損する骨董得する骨董」です。
第80回
商品学(ミャンマー編)
骨董の流出はこんな時―沈没前に船からネズミ
 


「きっと」ここ10年くらいの間に
ミャンマーには大きな変化が現れるだろう。
人々の心は徐々にではあるが変わってきている。
車や携帯電話がなくても人の心は荒まない。
どんな豪華な品々があふれかえっているような光景を見ても、
どこか他の国の出来事だったら、
うらやましくともなんとも無い。
しかし、食うものが不足したり、公平感がなくなったりすると
人民は爆発するのだ。

僕はヤンゴン郊外で道行く人の足元を見た。
きれいに磨かれた靴をはいている人がちらほら、
ゴム草履の人が90%ほど。
その間、間に裸足の人がいる。
田舎に行けばゴム草履と裸足が半々ぐらいだから
人々の顔に暗い影はない。

ミャンマーはこれからこの不公平感に
大きく悩まされるだろう。
スウチーさんは偉大な人だが
立ち上がるのがちょっと早すぎたのかもしれない、
と僕は思った。
まあ政治家とはそういう人が多い。
しかし、歴史の上では評価されるのだろう。

ああ、3回も骨董の話を全くしなかったね。
船が沈みかかると鼠がいっせいに海に飛び込むといいます。
国が乱れたり壊れかかると
どこの国でも骨董品がどっとマーケットに出回りだす。
そんな国は赤信号が点滅しているような状態です。

ソーッと一言、北朝鮮から骨董品が流出している。
僕の経験則に照らして言うのですが、
ここも早晩大きな変化がありそうです。
それに比べてミャンマーはまだ落ち着いている。
農民の絶対多数が飢えていないのです。
だからミャンマーからは
まだ骨董品はそんなに流出していません。
人々は敬虔な仏教徒で、寺院や古い遺跡を守っているのです。

しっかりとした国民性と米や果物を豊富に実らせ
飢える事のない環境がある。
しかし、その水も灌漑の水路が
あちこちで機能しなくなってきつつある。
時間の遅い早いはあるが
間違いなく貴重なミャンマーの美術品が
早晩世界のマーケットに出回ることになるだろう。


 
 
ミャンマーの漆器